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<宮崎地裁>暴行ビデオ原本提出を要求…裁判長、被告側に

女性客らへの強姦(ごうかん)罪などに問われた宮崎市のマッサージ店経営の男(45)の弁護士が、告訴取り下げを条件に男が盗撮したビデオの処分を女性側に持ちかけた問題に絡み、宮崎地裁(滝岡俊文裁判長)は25日の論告求刑公判で、被告の男に現在も所持しているビデオの原本の提出を求めた。検察側は「(ビデオの所持は)被害者が重大な苦痛を強いられ、著しく正義に反する」としてビデオ原本の没収と併せ懲役13年を求刑した。【菅野蘭】

 ◇検察「被害者に重い苦痛」

 女性側の代理人弁護士によると、盗撮ビデオは2014年3月、被告側弁護士から「無罪の証拠がある」として存在が示された。「法廷で上映することになる」などとして、示談金なしの告訴取り下げを条件に処分すると持ちかけられたという。

 県警による13年12月の家宅捜索ではビデオは見つかっていなかった。示談交渉が成立しなかったことから、被告側は起訴前の昨年3月、ビデオを捜査側に提出。捜査側はコピー作成後、原本を被告側に返却した。公判では複製が証拠採用された。

 被告側はこれまでの公判で「女性は拒絶していない」などと一貫して無罪を主張。公判で女性側が数回にわたり原本を渡す意思があるか尋ねたが拒んでいた。

 滝岡裁判長はこの日の公判で「問題となっているビデオ原本について証拠として提出してもらうことが望ましい。検討を進めるよう被告側に持ちかけた」と説明し、結審しないことを宣言した。

 検察側は論告で「被告側弁護人は原本提出を頑強に拒み、判決確定後もビデオを廃棄することは事実上不可能だ」と指摘。「ビデオは、告訴取り下げ交渉など逮捕を免れる手段として隠し撮りされたと認められ、犯罪供用物件として没収は可能。被害者の苦痛を和らげることが望まれる」と主張した。

 別の女性側の代理人弁護士は公判での意見陳述で「(ビデオは)没収されるべきだ。いつ流出するか分からない極めて深刻な事態だ」と訴えた。弁護側は取材に対し「原本提出は今後、検討する」としている。

 被告側にビデオを返却したことについて、捜査関係者は「返却しなければ捜査側が不当に所持することになる」と説明している。性犯罪被害に詳しい上谷さくら弁護士(第一東京弁護士会)は「盗撮は公共の場であれば都道府県条例で摘発できるが、私室や店舗内では無理だ。盗撮物といえども所有権は撮影した人にあり、所有権を放棄せず破棄も拒む今回のようなケースは現行法では対処できない」と話している


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